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劣等感を持っている自分が嫌!29歳女性からの相談

私は、容姿に劣等感があって悩んでいます。どちらかと言うと顔が濃く、肌の色も黒い方だと思います。子供の頃から女性として扱われた事がなく、恋愛にも消極的に生きてきました。彼ができても相手が不満に感じているのでは?と思う事ばかりでした。また仕事でも、誰にでもできることばかり任され、周りがどんどんスキルアップしていく事に焦りを感じます。このような劣等感を持っている自分が嫌なのでなんとかしたいと感じています。よろしくお願いします。



専門家の視点

相談者は、容姿にコンプレックスを抱えていらっしゃるのですね。特に女性の場合は男性に比べて容姿について悩まれる方が多いと思います。また、容姿だけでなく仕事にも劣等感を持っていると、日常生活でいつも満たされないという感覚があるのではないでしょうか。今回は劣等感をテーマにコラムを書かせて頂きますので参考にして頂けると幸いです。



1.劣等感とはなにか?

・劣等感とは
劣等感は、精神科医・心理学者のアドラーが使い始めた言葉です。劣等感を語る上で大変重要な人物のため、まずはアドラーについて簡単にご紹介したいと思います。

アドラーは心理学の研究をする前、ウイーンで個人の診療所を開業していました。患者の多くは肉体労働者だったため、体の悩みを聞いて治療をしていました。しかし、診療を続けるうちに、人間は肉体的なハンデを抱えているときに悩むということを感じるようになりました。この“悩む”が劣等感という概念です。

しかし、この”悩む“はマイナスだけでなくプラスもあると考えました。なぜなら、肉体的なハンデを抱える人の全てが悩むわけではなく、むしろそのハンデをバネにして、人生を豊かに過ごしている人を見てきたからです。例えば、サーカスで働いている人は、身長が小さいなど肉体的なハンデを抱えているにもかかわらず、多くの人を喜ばせる事で自信に満ち溢れていたからです。

その後アドラーは、フロイトと会うことで、精神分析の手法を学び、劣等感の研究を進めたと言われています。



・「劣等感」と「劣等コンプレックス」の違い
劣等感を詳しく分析するうちに、劣等感そのものは、心理学的に問題は無いと言う事が分かりました。ここで「劣性」「劣等感」「劣等コンプレックス」この3つの言葉で、詳しく説明していきます。

「劣性」とは、他人よりも劣っているとされる能力の事です。例えば、私は50メートルを7秒ぐらいで走りますが、陸上選手やオリンピック選手と比べると「劣性」となります。この事を「劣っているな」と感じたらそれは「劣等感」となります。私は走る事に「劣等感」を持っていますが「劣等感」を持っていても悩まないため、心理学的には問題はありません。

誰でも、劣っていても悩まないことはたくさんあります。例えば、私は年収に執着がありません。いくら稼いでいるかよりも、自分が好きな仕事をしているか、社会に役立っているかが大事だと考えているからです。そのため、私は自分よりも稼いでいる人を見てもそれが悩みになることはありません。しかし、心理学の世界で自分よりも勉強している人を見ると「ああ・・・もっと勉強しなきゃ!」と感じて悩みになってきます。劣等感だけでなく、それに悩みが加わった場合「劣等コンプレックス」として心理学的に取り扱うべき対象になるのです。

心理学の世界にいるとびっくりするような事に対して「劣等コンプレックス」を抱える人がいます。例えば、私からみれば綺麗なお肌をしている女性が、私はモデルに比べて肌が汚いと本気で悩んだり、慶応や早稲田に通って十分学歴が高いのに、東大生に対して「劣等コンプレックス」を持っていたり・・・。本当に様々な形の「劣等コンプレックス」があるのです。



2:劣等感の特長とデメリットは

・劣等感の特長
人間は、どのような条件で劣等感を発生させているのでしょうか。次の2つの視点から特長を確認してしましょう。

①誰と誰を比べるのか?
②劣等感をもつ分野



①誰と誰を比べるのか
1:他人が期待する自分VS実際の自分
  例えば、お母さんが期待する成績と実際の自分の成績 
2:自分自身が理想とする自分VS実際の自分
  例えば、本当は年収○○円になりたいのに実際は年収○○円 
3:他人VS実際の自分
  例えば、友達よりも私の方がモテないとか芸能人に比べて太っている 

このように、他人からの評価、自分自身の評価と比べて劣等感を持つようになります。



②劣等感をもつ分野
・性格/行動     他人に比べてイライラしやすいなど
・対人関係     周りに比べて友達が少ないなど
・外見       身長が低い、鼻が低いなど
・将来       将来の進路が明確かなど
・収入や役職の高低 動機の出席の早さなど
・社会的な仕事の評価 社会的に評価されない仕事など
・家庭構築  結婚をしている、していないなど
・家庭水準  生まれが不健全な家庭だったかなど
・運動能力  足が速い、遅いなど

劣等感の分野は、人によって異なります。ちなみに、私は「外見(腹筋が割れていない!)」と「家庭構築(まだ独身のため)」については劣等感があります。あなたの悩みはどの分野でしたか。自分のこだわりの傾向が分かるので、一度整理してみてくださいね。



・劣等感のデメリット
このように劣等感は、「他人と自分」「理想の自分と実際の自分」といった比較で、学歴や収入、外見について発生することがお分かりいただけたと思います。この劣等感を漫然と放置しておくと、様々な心理的なデメリットが発生してしまいます。



①劣等感は消極的になりやすい
劣等感がある人は、自分の意見を我慢してしまうため、ストレスが溜まりやすく、対人機会を避ける傾向があります。そのため、人間関係が希薄になり、相手に冷たい印象を与える傾向があります。このように対人関係が上手く構築できないと、それが悪循環となり劣等感を強めてしまいます。



②劣等感は欲求と行動のギャップが苦しい
劣等感を持つ人は、人一倍欲求があっても行動が付いていかず、苦しむという特長があります。例えば、「受愛(愛されること)」に対する欲求は、劣等感が強い人ほど「愛されたい」という思いがあるにも関わらず「愛情を受取れていない」と感じる人も多いのです。こういった自分に対して、自信を無くしてしまい、劣等感を強めてしまう事もあります。

劣等感が強い場合は、漫然と放置するのではなく、健康的に向き合っていく事が大切です



3:劣等感を克服する4つのコツ

あなたは劣等感を持ったとき、どのように解消しますか?今回は劣等感を克服するためのいくつかのコツをお伝えします。あなたにぴったりの方法を見つけてください。



①目標を持つのはOK 逃げるのはNG
劣等感がある時は、積極的に行動をした方が自信を高めるめ、劣等感を軽減する事につながります。

劣等感は、さまざまな種類があるため、全てにおいて行動するのが良いというわけではありません。また、体調が悪くつらいときは休息を取ることも大切です。しかし、ある程度の挑戦意欲があるときは、多少の失敗はOK!と言う精神を持って行動していくことがよいでしょう。

そして、行動するときには「目標を遂行したい」と前向きに考えましょう「ミスをしてはいけない」と消極的に考えていると、行動や結果に対して劣等感が強くなります。気持ちの持ち方で結果に対しての感じ方も変わってくるので、逃げずに目標を持って行動しましょう。



② 他者と比べないことが劣等感を克服する王道
これまでのコラムでもお分かりいただけると思いますが、まず「自分は自分」と考える心は、劣等感を克服する上で大切です。

私はよく講義で、おいしいカレーの条件はなんですか?と質問をします。「ほかほかのご飯とスパイスの効いたルー」「柔らかいお肉とゴロッとしたジャガイモ」「福神漬けなんかがあると最高ですよね」などの答えがでてきます。カレーは様々な具材が煮込まれて、旨みがでています。また、ご飯や福神漬けもカレーをより美味しく食べるために用意したいものです。もし、カレーにじゃがいもや肉が入ってなかったら、どこかさびしい味になってしまいます。そして、具が肉だけだったら油っこくなってしまいます。

カレーと同じように人間関係も様々な個性で豊かになっていることです。よく話す人、大人しい人、色白の人、色黒の人など、様々な人がいるからこそ社会は面白いといえるのです。

もちろん、他者との比較はある程度は大切ですが、それ以上に自分の個性を大事にしていただきたいのです。ジャガイモとお肉に優劣はありません。いいジャガイモ、いいお肉になる、ほっかほっかのお米になる!そういった努力はOKですが、他人の個性と自分の個性を比べて劣っていると感じることは避けるようにしましょう。



③劣等感は適度な開示で軽くしよう
劣等感は、隠したいと思っている人が多いのではないでしょうか。しかし、隠そうと思う気持ちは、劣等感を強めてしまうこともあるため注意が必要です。

例えば、私は昔大学に劣等感を持っていました。この気持ちをだれにも言う事ができず、自分の中で悩みが大きくなってしまいました。大学入学当初は、大学名を出すのにも躊躇し、なるべく大学の話題にならないよう神経を使っていました。そのため、他大学の人との交流はとても疲れるものになっていました。しまいには、中途半端な学歴だから自分は劣っている!だから、女性にももてないし周りから低くみられる…。と自分の中で解釈を拡大してしまい、ついには新しい出会いがある場所に、行かないようになってしまいました。

しかし、時間が経つにつれ「大学名を伝えて離れる人がいても仕方が無い」と思えるようになり、徐々に他大学の人と交流をもつようになりました。すると、大学名を伝えても自分が思っていたより周囲が無反応で、自分のこだわりに意味が無いように思え大学名をさらっと言えるようになりました。

劣等感は、自分にとって大きなものでも他人からすれば些細なこと、というのは多々あります。そのため、自分がこだわっている事でも、誰かに話して客観的な意見をもらうことで、劣等感は小さくなることが多いのです。心理学的にも、自己開示をすることで劣等感が軽くなることが分かっています。心理療法の一つである森田療法では、自分の悩みにこだわりすぎると余計にその悩みが深くなることも知られています。劣等感をもったら、まずは信頼できる人に話してみると、いいかもしれません。



④良い意味であきらめることも時には必要
劣等感の改善に「開き直る」ことも効果があります。「開き直る」というのは、いい意味であきらめるということです。自分なりに努力をすることはもちろん大切ですが「努力しても改善できないこと」については、いい意味であきらめる強さも大切です。

例えば、腹筋が割れていない、服装がダサい、体重がある、収入が低い・・・これらは努力をすれば、改善できる可能性があります。しかし、出生、身長、過去の出来事、記憶力、顔のつくりなどは、改善できる幅に限界がある事については、受け入れる勇気も必要です。もっと美人に生まれていたら・・・もっと家柄がよかったら・・・と感じる気持ちはあるかもしれません。しかし、こだわりすぎて自分を苦しめるよりも、前向きに受け入れて「自分の人生」を歩んでいく勇気も必要です。

後のコラムでもご説明しますが、劣等感は自分の人生を豊かにすることもあります。もし劣等感が自分の人生に役立っているなら、大いに悩んで良いと思います。しかし、悩みが本当の意味で自分の人生を豊かにしていないなら、その劣等感を前向きに受け入れる強さを持ってみましょう!



4:劣等感は心の燃料

・劣等感は自分を助ける
劣等感を最初に発見したアドラーは、劣等感を前向きに捉えていたようでした。なぜなら劣等感は、行動する上でのモチベーションに繋がるからです。例えば、前回のコラムで身長は変えることができない部分だから、受け入れることも大事だということをお伝えしました。しかし、身長が低いことで、それ自体は克服できないけれど、別の部分で成功して自分なりに社会的に認められよう!というモチベーションになるからです。

これは、心理学的に「昇華(sublimation)」という言葉で表されます。昇華とは、実現不可能な悩みを他の代替的な分野で置き換えてモチベーションに変える作業の事です。例えば、芥川賞を取った西村賢太さんは、家庭の事情で中学卒業と当時に日雇いの仕事を始めたそうです。苦労の多い生活だったそうですが、小説と言う形で社会的に影響を与える作品を書かれました。また、私の場合も、対人恐怖症をわずらった経験が元となり、コミュニケーションに関する仕事をするようになりました。このように劣等感は、使い方を誤らなければ、自分の人生の味方にもなってくれます。

劣等感を持っている時は、消えて無くなって欲しい!と思うかもしれません。しかし、手元に置いて上手に昇華できれば、自分のエネルギーにもなります。捨てるモノ、残すモノしっかり見極めて、自分のエネルギーとして活用するとよいでしょう。



・「社会的に貢献している」感覚が劣等感を減らす
劣等感は昇華することで行動のエネルギーになるとお伝えしましたが、ただ単に行動すれば良いというわけではありません。もし間違った昇華の仕方をしたとしたらどんな結果になるでしょうか。

例えば、容姿が優れず異性にモテない・・・という悩みを抱えていた人が、社会や周囲に対して恨みを募らせ、攻撃的になってしまったら、社会や周囲から反感を受け自分の居場所を失うことにもなりかねません。逆に、社会に貢献する形で昇華させたらどうなるでしょうか。異性にはもてないけど、恋愛とは別の形で認められよう!と考え、仕事に打ち込み結果がだせれば、仲間から認められ、自分に自信を持つことができるようになります。

劣等感を改善するうえで、独りよがりな改善方法は本質的な解決になりません。やけ酒、やけ食い、すぐに縁を切る、なども自分を苦しめるだけです。劣等感を改善する時は、なるべく社会に役立つ事でエネルギーに変えると良いでしょう。



5:劣等感まとめ

ここまで劣等感についてご説明してきました、いかがですか。劣等感を抱えているときは閉鎖的になり、自分自身の殻に閉じこもりがちです。しかし、勇気を出して心を開き、自分ができる範囲で社会に貢献できると、自分が段々と好きになってくると思います。人は比べようの無い個性を持っていて、その個性が社会を豊かにしています。劣等感は扱い方を誤らなければきっとあなたの味方になってくれますよ(^^)。

以上で劣等感のコラムは終わりです。まとめると以下のようになります。

・自分の個性に合うように目標を設定し行動しよう!
・他者と比べないようにする
・劣等感は自己開示を適度にすると軽くなる
・劣等感は昇華すれば自分を助ける
・社会に貢献して昇華しよう

ここまでコラムを読んでいただきありがとうございました♪もっとたくさんのコラムを読みたい方は、「コミュニケーション能力知恵袋(http://www.direct-commu.com/chie/)を参考にして頂けると幸いです!